将来の夢がなくても大丈夫?子どもたちの「今」に目を向けて

夢を描く

「今の子どもは、将来の夢を明確に答えられない」

そんな声を耳にした事があります。
教室でも「特にない」「まだ決まっていない」という声を聞いた事もあります。

そこで少し考えてみました。

「夢を描けない」というのは「悪いこと」なのでしょうか。

夢がぼんやりしているのは、発達段階として自然なこと

思春期は、役割や価値観を試しながら「自分は何者か」を探る時期です。

ライフサイクルコーチングでも説明をしたことがありますが、心理学者エリクソンの発達理論では、12〜18歳ごろの発達課題は「同一性(アイデンティティ)」であり、失敗状態が「自己拡散」になります。

さまざまな選択肢を試行する探索そのものが発達状態として健全だとされています。

そういう意味では「はっきり決め切れないこと」自体も健全だということになりますし、失敗している状態だという証拠はありません。

小・中・高校時代に将来像が固まっていなくても、その後だんだんと自分自身の輪郭が鮮明になることはむしろ普通です。

「選択肢が多すぎる」時代の難しさ

YouTubeやSNSで、職業や生き方の見本は無限に見えてきます。

選択肢が増えるのは良いことですが、選択肢が多すぎると人はかえって動けなくなる——心理学では「選択のパラドックス」として知られています。古典的な実験では、選択肢が多いほど人は選ばなくなり、満足度や継続意欲も下がる傾向が示されました。

これは「ジャムの法則」としても有名ですが、目の前に24種類のジャムを並べられた試食コーナーでは購入率は3%だったのに対し、6種類しか置いていなかった試食コーナーでは購入率が30%だったそうです。

この実験からもわかる通り、人は選択が多過ぎると「選ぶことを避ける」傾向があります。
1/6の中のベストを探すのと1/24の中のベストを探すのとでは、確かに精神的な負担に違いがありそうですよね。

情報過多で決めにくいのは、子どもたちの怠慢ではなく、認知的な負荷の問題もありそうです。

「自律」を支える関わり方

自律は自立の前段階で必要な個人の価値観とも言えます。

子供に将来像を「答えさせる」ことより、日々の学びや活動で「自分で選ぶ感覚(自律性)」「できる感覚(自己肯定)」「人とのつながり(関係性)」を満たす言葉や行動を支援する事こそ、教育という視点でもよっぽど有効です。

何でもかんでもすぐに諦める人間よりも、粘り強さや主体性を高める事を大切にするべきではないでしょうか。

「今できること」を積み重ねる

計画的偶然性」という考え方があります。

①好奇心、②持続力、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心 を持ち、物事に向かい続けることで、出会いや機会が増え、偶然的な進路が拓けるというもので、自己の計画的な努力により、必然的に良い偶然が巻き起こるのです。

先に完璧な目標を決めるより、「小さく試す」を積み重ねるほうが道が拓けるという視点は、子どもに限らず大人にも有効な考え方だと思います。

プログラミングは「今、夢が決まっていない子」にも効果的な基礎体力養成になる

習い事教室でも人気のプログラミングは、将来の選択に直結するだけでなく、問題解決や論理的思考といった「どの分野でも役立つ基礎体力を鍛えます。」最新のメタ分析でも、コーディングなどデジタル学習は認知的スキルの向上と関連していると言われていて、教育的効果は十分に期待できます。つまり、夢がまだ定まらない時期こそ、汎用性の高い学びを選ぶ事は時間的にも金銭的にも合理的な投資になります。

今すぐできる、親・先生ができるチェックリスト

①答えやすい質問にする

「将来何になりたい?」より「最近、少しでも面白かったことは?」と聞く。今現在、何に興味があるかの方がはるかに答えやすい。

②小さく試す計画

1〜2週間で終わる目標や体験を通して「それで、何がわかったか?」を言語化して説明させる。

③選択肢を減らす

ジャムの法則から、提示する選択肢を減らす。3つ程度に限定してみて「今、この中ならどれ?」と限定する

④指示に余白を残し、自律性を養う

やり方や順序を子どもに決めさせる部分を必ず作る(あれこれ全部を指示しない)。

⑤つながりを増やす

異年齢・異分野・周りとの「ゆるい接点」を増やして「偶然起こる何か」を計画する。

まとめ

今、将来について明確に語れなくても全然、大丈夫です。
発達段階としては自然なことです。

大切なのは、今日の小さな好奇心を行動に移し、自律性を学ぶ体験を積むこと。

そうしているうちに、将来の自分という輪郭は少しずつ少しずつはっきりとしてきます。

夢は「最初に決めるものではなく、ゆっくりと歩きながら形づくられていくもの」なのです。