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親の信頼が「重荷」になるケース
ライフサイクルコーチングから考えられる、ライフサイクル理論から考えるアイデンティティの危機についての記事です。
ライフサイクルコーチングというのは代表の德増が提唱している教育に関しての基本理念です。
アイデンティティというのは簡単に言うなら「自分とはなんぞや?」というもので、「自分はこうありたい。」「こう言う仕事をしたい。」「こういう生き方をしたい。」という自分自身についての自己理解のことで、アイデンティティの確立というのはこういった自分自身についての理解が確立された状態のことです。
信頼がなぜ重荷になるのか
親が子どもの将来を想うこと自体は大切なことであり、当然のことです。
愛情を注いで育てている子どもに対しては「こういう大人になってほしい」というある種の期待が生じるものです。
その中で親子の信頼関係とは別に「信頼」という名の親からの一方的な「期待」や「決めつけ」が生まれてしまうことはひとつ冷静になって考え直さなければならないと思います。
間違った形で子どもに伝わってしまうと、かえってその子の自己形成を妨げることがあるからです。
今回は、ライフサイクルコーチングのベースにもなる、心理学者エリクソンの「ライフサイクル理論」をもとに、親の信頼と子どものアイデンティティの関係についての記事を書かせていただきます。
エリクソンのライフサイクル理論とは?
エリクソンは人の一生には周期があると考え、年代別に発達段階を分けました。
それぞれに克服すべき課題があると考え、「成功状態」と「失敗状態」に分けました。
代表的な例は以下になります。
発達段階 | 年齢 | 主な課題 |
---|---|---|
乳児期 | 0〜1歳 | 基本的信頼 or 不信 |
幼児期 | 1〜3歳 | 自律性 or 恥・疑惑 |
学童期 | 6〜12歳 | 勤勉性 or 劣等感 |
青年期 | 12〜18歳 | アイデンティティ or 自己拡散 |
成人期 | 20代以降 | 親密性 or 孤独 |
とくに「青年期」は、自己とは何かを問い、自分の進む道を模索する期間(モラトリアム)と呼ばれ、ライフサイクル全体の中でも非常に重要な時期とされています。
モラトリアムの期間に失敗状態を経験した子どもたち
上の表を見ると、例えば「幼児期」の発達課題は「自律性 or 恥・疑惑」となります。
成功状態は「自律性」が養われていくことで、失敗状態は何か間違いをすると恥ずかしい、何をするにも不安になる「恥・疑惑」状態となります。
たとえば、ある子が小学校の頃からずっと「あなたは医者になると信じてるよ」と親から言われ続けたとします。
本人は特に医学に関心がなかったとしても、「親の期待に応えることが自分の価値だ」と思い込んでしまうと、自分自身の興味や可能性を探索するモラトリアムの時期に、他者からの評価が絶対的な基軸になり物事の判断基準が自分ではなく他人になってしまいます。
こうして「親からの信頼=進路の強制」と感じてしまうと、青年期に本来必要な試行錯誤を経験できず、結果的に「本当の自分」がわからないまま大人になってしまいます。
アイデンティティが確立されないことによる影響
青年期にしっかりと自分の価値観や人生観を築けなかった場合(モラトリアム期間を失敗状態で過ごした場合)、大人になってからこんな問題が生じることがあります。
- 人間関係に迷いや不安を感じやすい
- 他者からの評価に過度に影響を受ける
- 選択や決断が極端に苦手になる
- 生きがいや目的が見いだせず、無力感に陥る
これはまさに「アイデンティティの確立に失敗した状態」であり、生きづらい人生だと感じてしまいます。
親の「信頼」は、見守ることから
親ができる最も大切なことは、信じて「見守ること」です。
・子どもが迷っているときも、答えを決めつけずに寄り添う
・失敗や脱線も成長の一部と受け入れる覚悟を持ちいちいち口出ししない
・日常的に起こる選択の機会には「自分で選ぶ」という経験を積極的に積ませる
親子の信頼関係が築ける教育とは「あなたが何を選んでも大丈夫!」と伝え「見守る」ことであり、「あなたにはこれが合っている」などと価値観を植え付けることではありません。
おわりに
子どもの素敵な将来を願う気持ちは、すべての親に共通するものです。
しかし、その愛情が誤った方向に働くと、子どもの自己形成の大切な時期(モラトリアム)を奪ってしまう危険性があります。
ライフライくるコーチングは、子育てにおけるヒントが得られます。
また、教育を間違えたのかも・・・と悩んでしまう状態であっても、
具体的にどこの部分を矯正していけばいいかがわかります。
今回は「信頼」というテーマで書きましたが、「本当の信頼とは、信じて待つこと」です。
この姿勢こそが、モラトリアムの期間に、子どもが自らの人生を切り開いていく力を形成する(アイデンティティの)手助けになるのです。